「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「ごめんなさい。ちょっと言ってみただけ。だったら、フェリペ。淹れてくれる?」
「もちろんです」

 彼は、さっそく準備にとりかかった。

「カヨ様、お体はほんとうに大丈夫なのですか?」

 手伝いたいけれど、先程のことがある。

 わたしがよかれと手伝って、なにかあっては大変。だから、厨房にある椅子に座って待つことにした。

 フェリペは、そんなわたしにお茶の準備の手を止めることなく尋ねてきた。

「大丈夫よ。心配かけてごめんなさい」
「よろしければ、あとで打ち身に効く塗り薬をお渡しします」
「ありがとう。そうね。念の為もらおうかしら」
「はい。それと、カヨ様」

 そのときになって初めて、彼はティーセットを並べる手を止めた。
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