「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「フェリペ。わたし、あなたのことを……」
「フェリペ、遅いぞ。なにをしている?」

 彼にわたしの彼に対する弟愛を伝えようとしたタイミングで、エドムンドが厨房に入ってきた。

「兄さん、すまない。いま、淹れているところだよ」

 エドムンドは、フェリペの謝罪をききながら傷のある顔を険しくしている。

「エド、ごめんなさい。わたしがフェリペの手を止めたの。彼のせいではないわ」

 だから、フェリペをかばわずにはいられなかった。

「フェリペ、はやくしろ。クスト様がお待ちだ」
「は、はい」

 エドムンドは、わたしを見つつフェリペに厳しく命じた。
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