「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~

地下室

「ヘルマンと二人でこの屋敷を見てまわって驚いたよ。彼女が使っていたときのままの状態だったからだ。彼女の持ち物が残っていた。クスト。いつかおまえが現れるようなことがあれば、見せてやろうと思ってな。地下室に置いてある。ほら、これが鍵だ」

 アルマンドは、ジャケットのポケットから小さな鍵を取り出した。それをクストディオに放り投げる。

 そうだったのね。地下室にモップはなかったんだ。

 地下室ときいて、まずそう思った。

 地下室にモップがあると思い込み、そのせいで階段から落ちてしまったのである。

 落下損、というわけね。

 それはともかく、的外れのことを思っている間にアルマンドがさらに衝撃的なことを告げていた。
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