「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「コンコン」

 そのタイミングで主寝室側の扉がノックされたので、驚きのあまり文字通り寝台の上で飛び上がってしまった。

「カヨ、まだ起きているか?」

 クストディオの押し殺した声がきこえてきた。

「ええ、起きているわ」

 即座に応じた自分の声もまたかなり小さかった。

 声をひそめる必要などないのに、なぜかひそめてしまう。

「入って」

 さらに小声で言うと、すぐに主寝室側の扉が開いた。

 こちらの部屋に入って来たクストディオは、例の封書を手に持っている。
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