「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 その封書は、暗殺された国王がクストディオのお母様に宛てた手紙だった。

 正確には、遺言書だった。

 それがいま通用するのかしないのかはわからないけれど、ちゃんと国王の印と署名が入っている。しかもこの遺言書の作成にあたっては、当時の大司祭も立ち会っていたらしくて大司祭の署名も入っている。

 クストディオは、生まれながらにして国王になる宿命を背負っていた。

 その印が体に刻まれていた。

 が、当時の状況は厳しかった。権勢をふるう宰相やその妹である正妃や野心的な王弟が、そのような「体に刻まれた印」で納得するわけがない。下手をすると、生まれたばかりのクストディオが殺されてしまう。

 国王はクストディオを守る為、表向きは離縁した上でクストディオの母親と彼をバラデス王国を去らせた。

 いつか機会がくれば、正式に迎えると約束をして。

 結局、その約束は果たされなかったけれど。
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