「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 クストディオのお母様が、どうしてそんな大切な遺言書をこの隠れ家に置いていたのかはわからない。

 なんらかの理由で、慌ててここを去らねばならなかったのかもしれない。

 おそらく、そうだったに違いない。

 とにかく、このあらたな遺言書が出てきた。

 これがどうなるのか、正直わからない。

「まさかあの臀部の醜い痣がそんな重要な印だったとは。というよりか、そういうのは書物の中の話だろう? 創作としか考えようがない。こじつけ、というやつさ。国王が思いついたのか、あるいは大司祭とやらが思いついたのか」

 クストディオは、苦笑している。

 たしかに「生まれながらの王」の印を持って生まれてくるというのは、書物の中でしかお目にかかったことがない。

 書物なら、ドキドキわくわくとともに読み進めたはず。

 が、これは現実である。

 クストディオの推測は、推測ではないのかもしれない。つまり、赤子の臀部の痣を見て思いついたのかもしれない。
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