「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 すこしだけカッコをつけつつ、ゆっくりと居間を横切る。すると、彼女が呼び止めてくれたのである。

 心の中で快哉を叫ぶ。

 振り向くと、彼女が佇んでいる。

 彼女にはどうでもいいかもしれないが、おれには癒しになる会話を交わす。ひとつひとつの会話は、尊すぎる。

 その中で、彼女だけでなく彼女の両親であるセプルベタ侯爵、侯爵夫人、彼女の兄エルネストにも世話になっているのだとあらためて思い出させてくれた。つまり、彼女の家族全員に恩があるわけだ。

 彼女たちは、これまで一度だってそのことを恩に着せたりはしない。

 いつかきっと多大な恩を返さなければならない。その為には、ここで踏ん張らねば。どうにかいっぱしの男になって、まずはカヨをしあわせにする。その上で彼女の家族たちの恩に報いる。

 あらためてそう心に誓う。
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