「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 彼女の手料理を何度もご馳走になっているけれど、彼女の料理はセプルベタ侯爵家の料理人より美味いかもしれない。

 なにより心のこもった料理は、子どもの頃から何度も感動を与えてくれるし励ましてくれる。

 料理だけではない。服が破ければ繕ってくれたし、刺繍入りのハンカチをプレゼントしてもらったこともある。汚れた服を着用していれば、洗濯してアイロンまでかけてくれる。

 どれをとっても完璧だ。

 それなのに、どうしてカヨは? カヨは、母親から学ばなっかったのだろうか?

 謎すぎる。

 そんなことを考えながら料理をしていると、そのカヨが床にオリーブオイルをぶちまけ、モップを探しに行った。

 戻って来たら床を拭いてもらって、居間で待っていてもらおう。

 そう決断した。

 その瞬間、この世の物とは思えないほどの悲鳴が隠れ家内に響き渡った。

 厨房を飛び出していた。
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