「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 そこそこの顔立ちだ。しかし、傲慢で口が悪くてなにかとカッコつけるところから、その見知らぬ男が第一王子だと確信した。

 結局、推察通り第一王子だった。彼は、とにかく態度が大きい。エラそうに振る舞うばかりか、カヨに対して暴言を吐いた。

『そそられない』

 彼は、そう言い放ったのだ。

 おれはいい。おれも彼女に同じようなことを言ったが、おれは言っていいのだ。

 なぜなら、彼女とおれは幼馴染だし、気心が知れている。彼女も本気に取らないだろうし、それ以前に右から左にきき流している。

 しかし、第一王子は違う。

 初対面のレディに対して「そそられない」などと言うか?

 カヨを傷つけるようなことを言うなどと、けっして許してはならない。おもわず、手が出そうになった。

 エドムンドとフェリペも、おれと同じ気持ちだったに違いない。
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