「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 自分で自分の自制心を褒めてやりたくなった。

 かろうじて怒りを抑え込むことが出来たのである。

 そして、とりあえず第一王子を居間に連れて行った。

 彼と二人きりになったタイミングで、嫌味の一つでも言ってやろうかと思った。

 あるいは、拳の一つでもくれてやろうかと。

 が、タイミングを計っていたのは向こうも同じだった。

「カヨは、いいレディだな。おまえが参ってしまっているのも無理はない」

 彼は、ローテーブルの向こうでそんなことを言いだしたのだ。それだけではない。それを皮切りに、カヨのことをべた褒めし始め、おれのことをうらやましがった。

 正直、意外だというよりかはうれしかった。鼻が高かった。

 なにより、そのカヨの夫、って夫のふりだが、とにかく体裁上は夫であることが最高のよろこびであり誇りだ。
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