「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 それにしても、日記はともかく遺言書のような大切なものがここにあるのか。不可思議でならないが、それも母の人となりを知ることで納得した。

 それはともかく、遺された母の日記やら父の遺言書から、わずかだが彼らのことを身近に感じることが出来た。これまではどこか他人のようにしか受け止めていなかったが、こうして手書きの文字を見ていると親近感がわいてくる。

 が、それが愛おしいとか会いたいとかというわけではない。母のことはまったく覚えていないし、父にいたってはほんとうに父親だと判明したのがつい最近だ。そういう存在に情がわくかといえば、それは土台無理な話だ。

 カヨや彼女の家族の方が、よほど親近感がわく。さらには、愛おしいし多大な恩を感じている。

 彼女たちには迷惑だろうが、おれにとって彼女たちこそが家族だといえる。
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