「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 いま、わたしたちは例の地下室にいる。

 わたしたちというのは、クストディオとわたしのこと。

 地下室にクストディオと一夜をすごすことになってしまった。

 思いもかけず、狭い空間に二人きり。

 宰相の手の者たちに襲われるかもしれないということより、クストディオと二人きりということの方がはるかにドキドキする。

 いまさらどうでもいいことだけれど、地下室にモップはなかった。

 モップだけでなく、掃除用具の類はいっさいなかった。

 つまりわたしは、ここにモップを取りに来ようとして階段から落ちたのがバカバカしかったわけ。

 それはともかく、地下室はそんなに広くも大きくもない。
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