「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 そのまま顔を彼の胸に埋めた。甘えるだなんて、暗闇のせいよ。暗闇がこんなことをさせているのよ。

 すべて暗闇のせいにしておく。

 彼との間に会話はない。ずっと息を潜めているから。

 心臓の鼓動が激しく、そして大きすぎる。

 それが自分のなのか、それとも彼のものかはわからない。あるいは、二人のものか。

 物音は続く。このままの姿勢も続く。

 エドムンドとフェリペが地下室の扉を開けるまで、ずっと二人きりで抱き合っていた。
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