「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 執務室に入ると、アルマンドは執務机の向こうにいる。

 机上に頬杖をつき、美貌ににこやかな笑みを浮かべている。

 アルファーロ帝国の外交官で偽名で面会を申し出ているのに、わたしを見てもポーカーフェイスを崩さない。そこのところはさすがね。

 彼は、わたしがなんとしてでもここにやって来るのを予想していたに違いない。

 それにしても、執務室じたいもムダに広いわね。

 執務室内は、控えの間同様シンプルである。ムダなものはいっさいない。だからこそ、広さが際立っている。

 これだけ距離があると、彼をどうにかしようと思っても彼のもとに行きつくまでに邪魔が入ってしまう。

 たとえば、彼を殺そうとか傷つけようとかして近づくまでに執務室内に護衛兵かなにかがなだれ込んでくる。
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