「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 捕らえた二名は、尋問した。

 黒装束に覆面。その恰好は、以前読んだ書物の暗殺者と同じだった。

 書物のような架空の世界と同じなのだな、とムダに感心してしまった。

 それはともかく、覆面をひっぺがした素顔は、どちらも「いかにも」な人相をした中年の男だ。書物の中では、依頼人の名を尋ねてもけっして明かそうとしなかった。それが、プロだから。

 しかし、その二名は書物の中の暗殺者よりかはプロ意識に欠けているようだった。

 あっさり白状したのだ。

 宰相に雇われたのだと。

 そうして、二名は隠れ家の外に放り出した。

 血が完全に失われる前にみずからの力でどこかに行って欲しいから。

 二名は、ふらつきながらも去って行った。とくに感謝することもなく。さらには、捨て台詞を吐くこともなく。ただ静かに去って行った。
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