「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 馬車には黒色のスーツ姿の男たちが乗っていた。

 王立公園のバラ園で護衛をしていた男たちである。

 そういえば、その内のひとりは第一王子アルマンドが飼っているスパイだったはず。

 どちらだろうか?

 馬車に揺られながらチラチラと様子をうかがうも、二人は同じようにしか見えない。したがって、判別出来なかった。

 そうこうしている内に、馬車は屋敷を通り越して裏庭に向った。

 裏庭も木だらけだと思っていたが、馬場や厩舎が目に飛び込んできて面食らった。

 地方に屋敷を構える場合は、敷地内に馬場や厩舎を所持していることが多い。だが、都会でこのようなスタイルはめずらしい。すくなくとも、おれは初めて見た。きいたこともない。
 もっとも、おれは世間知らずだ。だから、ただ見聞きしたことがないだけかもしれない。

 それはともかく、馬車は停車した。

 会いたい人物の前で。
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