「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「お兄様、わざわざお越しいただいて恐縮なのですが……」
「ああ、いいんだ。おまえの返事は、わかっている。どうしても様子を見たかったから、転がり込んできた口実にのっかっただけだ」

 お兄様は、さわやかに応じた。

「それでしたら、セプルベタ侯爵家で待っているクズの使者にお伝えください。『だれがおまえの婚約者になるものですか。わたしは、素敵な夫と隣国で謀略(・・)のかぎりを尽くしていてしあわせです』、と。ああ、それから『ざまぁみろ。勝手に滅びろ』とも」

 わたしもまたさわやかな笑みで告げると、隣のクストディオが息を飲んだのを感じた。

「夫? そうか。仲良くやっているようだな。それに、絶好調のようだ。安心したよ。父上と母上にも様子を伝える。二人もおおよろこびされるに違いない」

 さすがはお兄様。いまの内容ですべてを察してくれたみたい。
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