「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「しかし、侯爵令嬢様を長椅子に寝かせるわけには……」
「まったくもうっ! ほんと、嫌味ばかりよね。知っているでしょう? わたしは、草の上や木の枝の上でも眠ること出来るのよ。長椅子なんてまだいい方。ほら、枕を貸して。それから、毛布を一枚ちょうだい」
「きみは、あいかわらず強情だな。明日、ヘルマンに言って別々の部屋にしてもらおう」
「強情は、おたがいさまでしょう。ヘルマンに頼む必要はないわ。わたしが長椅子で眠ればいいだけだし。わたしはいっこうにかまわない」
「いや、おれがかまうんだ」
「なんですって?」
「あ、いや。なんでもない。やはり、マズいだろう。おれたちは、その、ほんとうの夫婦ではないし」
「バカね。夫婦のていなんでしょう? それを別々の部屋という方がおかしいわ。どうせわたしたちの間にはなにもないんだし、かまわないじゃない」
「だから、かまうんだって」

 クストディオの顔が真っ赤になっている。
 熱でもあるのかしら?

 そういえば、この部屋暖かいわね。
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