「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 いまはおたがいに縛られるものはなにもない。というよりか、心の枷がなくなった。愛や絆や信頼のまったく抱けない相手から婚約破棄をされ、心身ともに解放された。
 それは、二人とも不本意どころか歓迎すべきことだった。まあ、たしかに周囲には恥をかいたことになっているけれど。それでもわたしたちに非はなく、被害者だということは知れている。だから、そこはよしとしたい。
 
 とにかく、いまはおたがいに以前とは違う。

 おたがいの言動には注意を払わねばならない。

 一応、夫婦というだけであってほんとうは夫婦ではない。あくまでも偽装、というかふりにすぎない。

 クストディオにとってわたしは、ほんのわずかでも好意を抱くどころか、子どものときからの「憎むべき敵」、「戦うべきライバル」という存在。それ以上でも以下でもない。

 それを忘れず接しなければならない。

 勘違いしない為にも。
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