「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 とりあえずお礼を告げると、エドムンドは一瞬驚いた表情を浮かべた。だけど、それもほんのわずかで、すぐにポーカーフェイスに戻ってしまった。

 ほんと、わかりにくいわ。

 エドムンドもフェリペも表情を読むのが難しい。おそらく、そのように特訓かなにかをしているのかもしれない。

「ああ、カヨの言う通りだ。感謝するよ。だけど、どうして黙っていてくれたんだ? というか、あとでヘルマンとの間で厄介なことにならないか?」
 
 クストディオもお礼を言うと、エドムンドは両肩をすくめた。

「とくに重要なことではありませんので。あとでバレたとしても、『てっきり夫妻だとばかり思っていました』と言うだけです」

 彼はそう答え、また両肩をすくめた。

 その彼の横で、フェリペがなにか言いたそうにしている。
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