「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 彼の前を行ったり来たりしながら大きな溜息をついた。

 溜息は不幸を招き寄せる。だから、皇都から追放されてからはつかないようにしていたのに。というか、最近のスローライフではつく必要がなかったのに。

 それなのに、こいつと顔を合わせた途端にこれである。

 だけど……。

 正直、彼の話は魅力的だわ。

 テラスを横切り、バラの花壇に近づいた。

 お母様が丹精を込めて育て上げ、わたしたちが皇都にいる間はお兄様が面倒をみていたバラたち。

 レインボーローズ。七色に光り輝いている。

 その花言葉は「無限の可能性」。そして、「奇跡」。

 どちらもわたしにピッタリ。
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