天使が消えた跡は
再び敵の真上に移動し、狙いを定めて勢いよく急降下した。つもりだった。
敵も薫に向かって飛びあがってきたのだ。
全く予想していなかった攻撃に、薫はどうすることも出来ず、そのまま顔面に打撃を受ける。
「痛いっ!」
体全体に振動がいきわたる程の打撃。左腕にも力が入らなくなってきた。顔からは鼻血が出ている。
体は一気に吹き飛ばされ、うめき声すらも出せないほどの痛みに耐える薫。
その隙を見て勢いよく薫に向かって突進してくる生物。
賭けるしかない。
体の力を抜き、突進される直前でルーに頼り宙へ浮かんだ。
右手のナイフを長く伸ばし、廊下の床へと突き刺した!
「――――――――――――――――!!」
耳が痛い!
謎の生物はゆっくりと溶けていき、跡形もなく消えていった。それを見たサラクもまたどこかへ去って行ってしまった。
それからしばらく地面に横たわり体を休めた。相変わらず左手の痛みは消えない。
出血も酷いことだろう。それを考えると早く帰宅したほうがよさそうだ。
幸い男子生徒も正気を取り戻したのかこの場にはいない。プリントを持って自分の部屋までの空中散歩だ。