天使が消えた跡は
目を覚ますと、空はもうほとんど暗くなっていた。
ルークはまだ寝ている。何もしていないはずなのに、まぁ、腕を直してくれたけれどどうしてそんなに眠るのだろうか。
思い返せば、普段から帰宅するたびにベッドで横になっている姿を見ている。薫が学校に行っている間に何かしているのだろうか?
いろいろな疑問を浮かべるが、それはあとで直接本人に聞いてみることにした。おそらく教えてはくれないだろうが。
体力も回復したところで宿題を終わらせ冷蔵庫からチョコレートを取り出し食べていたところでルークが起きた。
「体の調子はどう?」
「もう平気、左腕も居たくないし、そのほかのものはほとんどかすり傷みたいなものだったし」
『それは良かった』と、本当に心からの安心を笑顔で表し、薫に近付くと優しく髪を撫でた。
『まただ。ドキドキしてしまう』
しかしドキドキしている場合ではない。聞きたいことが山ほどあるのだ。
「ねえルーク」
薫が聞きたいのは紛れもなくルーク本人の存在のことだ。
「ルークって何者? 私が学校に行っている間いつも何をしているの?
だって何もしていないのに毎日毎日そんなに眠れるはずがないよ。今日だって何か疲れることでもしていたの?」
立ち上がった薫はベッドで上半身を起こしたルークの顔に近付き、問いただす。
「見ての通りだよ、天使だよ。それに今日は薫の腕を直したからね、流石にちょっと疲れたよ」
その後も問いただしを続けるが、適当な返事でのらりくらりと答えをかわして何も教えてくれない。
これ以上の問答は意味がないと思い諦めた。
「ところで」
これ以上質問が来ないことを見越したのかルークが話しかけてきた。
「確実に狙ってきているな…」
サラクのことを言っているのだろう。
8人が殺されてしまった今、残っている薫をどうにかして殺そうと考えているだろうと言う話だ。それは実際に攻撃を受けている薫が一番よく感じていることだった。
「運動神経がいいのがせめてもの救いかな?」
そう笑顔でルークに話しかける薫。
それでも、戦い慣れるということは流石に必要になってきていると内心では思っていた。