天使が消えた跡は
第7章 いざ王子様の元へ
「薫―――……!」

 あれ……?

 一瞬意識を取り戻した薫。なんだか体中が生暖かい。

 薫のことを呼んだのはルークだった。

 私、どうして寝てたんだっけ……。



「――――……!!」



 痛みで声のない叫びをあげる薫。

 視界の隅にはルークの姿が。涙を流しているようにも見える。

 ルーク、どうして泣いてるの?

「薫ちゃん!」

「薫しっかりしろ!」

 横を向くとクラスのみんなの顔が。


 学校、教室……?


――――――――……鷹!!



 完全に意識を取り戻す薫。しかしまたすぐにでも意識を失いかねない。そして、次は命も危ない。

 右腕は完全に捕まっている。右手には光のナイフがあるのに……。

 『自由自在に形が変わる……』

 薫の脳裏には、この光のナイフが自分の身体から初めて出てきた日のことがよみがえっていた。

 『お願い、曲がって――!!』

 薫の右手から伸びていたナイフは奇妙な向きに曲がり始め、鷹の首元へと一直線に伸び、その首を巻き取るように切り落とした。

「――――――――――――――!!!」

 『耳が痛い!!』

 教室の中にいた生徒たちも耳を押さえている。

 薫の思考はまた、黒くなっていった――。





「―――あれ……?」

 薫が目を覚ましたのはあれから何時間も経った午後5時の事。

「薫! 大丈夫か?」

 視界にはルークとルーの顔、そして見覚えのあるクラスメイト達数人。

 めまいがして頭がぼーっとしている。

 ゆっくりと脳が動き始める。

 授業を受けていて、カラスが居て、そしてそのあと……、そのあとは……。

「あ、あいつは!? 鷹は? 悪魔の式神は?」

「大丈夫、薫が倒してくれたよ」

 そのルークの言葉に安心する薫。そして、初めて自分の今いる場所を確認した。

「保健室?」

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