天使が消えた跡は
「ルーはね、姉の孤独なんだ。俺は……」
ルークは涙を流した。
「俺は薫を孤独の天使にしてしまった……。これから君は孤独にさいなまれて生きることになる。この島も消えてなくなる。
この島にいる天使たちも元の国に戻って生活することになる……」
ルークが嗚咽を漏らした。
「薫の……薫の両親はもう居ない……。天国に行ったよ」
「―――え……?」
「あの日、あの公園で君を見つけなければ、君を孤独の天使にすることなんか無かったんだ……。
ごめ、ごめんね……。また会いたいって思ってしまったんだ」
ルークの目からとめどなく涙が溢れてくる。
「薫が孤独から解放されたとき、俺もまた解放される。
もう会うことは出来ないかもしれないけれど、身勝手だって解っているけれど、もし俺のことを覚えてくれるのならば、俺を救ってほしい。
わずかな希望をもって、俺は君を探すよ……」
愛情が孤独を産むなんてそんな話は聞いたことがない。薫には荷が重すぎた。何も考えられない。
それなのに、それなのにルークに対する愛情はなぜこんなにも溢れてくるのだろうか。
薫はルークの膝から降りると向き直り、熱烈なキスをする。自分の涙と、ルークの涙で舌の上が塩辛い。
「私だってルークのことをこんなにも愛してしまった。気持ちも心も追いつかないけれどどうすればルークを解放できるの?」
「いつ生まれるか分からない、沈黙の天使を探して。沈黙の天使が俺たちの最後の救いなんだ」
「沈黙の天使ね、分かったわ必ず探して見せる。その天使もあなたのお姉さんの心を持って生まれるのね」
「そうだよ。だからきっと気付くはずだ」
ルークがそう言うと彼の身体が一瞬瞬いた。
「何?」
「時間がきたんだ。沈黙の天使をさがしてくれ。約束だ」
その言葉を最後に次第にきらきらとした光に変わるルークの身体。もう触れることも出来ない。
愛を知った日に愛を失うことになるなんて思わなかった。
「薫様」
クォールの声がする。
「ルーク様がお帰りになられてしまいましたのでこの島は消えてしまいます。
残酷なことをお伝えしなければなりませんが、薫様のご両親含め、ご親族の皆様も天国へと向かわれました。
これからは孤独と戦っていただくことになります。
自害などなさらないようお気を付けください。天使は寿命が長いですから」
薫は床にへたり込んだ。空を見上げるが、涙で何も見えない。
「あああああああ―――――――――――――――……!!!!!」