天使が消えた跡は
女子寮から3分、学校の中の教室まで走り立ち止まると一息、深呼吸をする。
最近毎日目覚まし時計のせいで走ってばっかり。流石に買い換えないといけないか。気に入ってるんだけどなぁ。
そんなことを思いながら教室のドアを開けた瞬間、大勢の視線が薫に向けられた。
クラスの生徒のほとんどはその手に新聞を握っていた。
「薫だ!」
「えっ? なんか変なのが付いてるけどなにあれ?」
「ねぇ、ニュースの話って本当?」
教室のドアから押し出される勢いでクラスメイトが圧をかけてくる。
「薫、外にすごい数のマスコミが居るよ?」
ドアの近くにいるクラスメイトを押し避けて窓に向かうと40人ほどは居るだろうか、大きなカメラを持った人や、脚立の上から覗き込んでいる人、それを校門越しに抑え込む教師の姿も数多く見えた。
「女子寮に来ててよかったんじゃない? 校門通らなくても学校内に入れるからね」
他人事のように言うクラスメイトに少しだけ嫌気がさした。まぁ、全く持って他人事だろう。
そしてHRを知らせる鐘の音と同時に担任が姿を現した。
「出席取るぞー。席に着……四月一日、その生き物は何だ……?」