【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「魔力交感に関する特例の事後報告書です」
 魔力交感の言葉に、国王の眉間に皺ができた。
「誰と誰だ?」
「書いてあります。お読みください」
 国王は報告書に視線を落としたが、すぐさま顔をあげて、ローランを見上げる。
「誰と誰が、魔力交感を行った?」
「ですから、書いてあります。もしかして、字が読めないと」
「ふん。ああ、そうだな。お前の字が悪筆すぎて読めない。だから、教えて欲しい。誰と誰がどのような状態で魔力交感が必要になったのか」
 言いながらも、国王の顔には笑みが浮かべられている。
 悪筆で読めないというのは嘘だ。彼は、ローランの口から聞きたいだけなのだ。
「では、書き直して参ります」
 ローランは国王の手の中にある報告書に手を伸ばそうとした。だが、すぐさま国王によって制される。
「この報告書は、私のほうで書き直してあげよう。わざわざお前の手を煩わせる必要はないだろう?」
「いえ。わざわざ陛下のお手を煩わせるような案件でもありません」
「いいから。早く教えろ。誰と誰が魔力交感をしたんだ」
 もはや、報告書が悪筆だとかはどうでもいいらしい。とにかく、ローランに言わせたいだけなのだ。
「俺と、エミーリア・グロセ事務官です……」
 国王の顔は、盛大ににやけていた。
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