【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
 だが、前国王に想い人がいたという話は有名な醜聞であり、その醜聞の結果、生まれたのがローランなのだ。
 ルカーシュは前王妃によく似て、穏やかな顔つきをしている。金色の髪は、父親から受け継いだものだが、宝石のような翡翠色の瞳は、間違いなく母親から受け継いだものだ。
 それに引き換え、当時のローランは父親によく似ている。だからこそ、醜聞のネタにされていた。
 ローランは、ずっと父の存在を知らなかった。物心ついたときから、母親と二人で暮らしていた。母親が亡くなり、母の兄に引き取られた。彼らの家族はローランを温かく迎え入れてくれたが、負担になっていたのは間違いないだろう。そう思ったローランは、早いうちから学園に通い、そこの寮で生活を始める。
 身体が少年から大人への変化を迎えようとしたとき、彼は一人の教師によって王城へと連れていかれた。
 連れていかれた先には、自分とよく似た顔の男がいたのだ。
 その場にいた誰もが、ローランが国王の息子であると認識した。母親の名を告げると、彼は寂しそうに目を伏せる。そして、ローランは国王の子として認められ、必要な教育を王城で受けるようになるのだが、それを面白く思っていない者が一人だけいた。
 もちろん、前王妃である。
 ローランの目元の傷は、前王妃によってつけられたものであった。嫉妬によって狂った前王妃を止めたのは、彼女の息子でもあり、ローランの義兄でもあるルカーシュ。だからこそローランは、目の前の義兄に頭はあがらない。彼が止めてくれなければ、ローランはあのとき命を失っていただろう。
 ローランは、王位を狙っているわけではないことを示すために、学園卒業後はすぐさま騎士団に入団し、ルカーシュに忠誠を誓う。
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