【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
ローランが結婚を望まないのは、前王妃との関係もある。ローランとしては王位を望んではいなかった。ただ、父という存在に喜びを感じだけ。
それでも当時、隣国から嫁いできて不安定だった彼女にはそう見えなかったのだろう。息子の存在を揺らがす者が現れたと思ったのかもしれない。
今となっては離宮でそれとなく暮らしている二人の関係に、風波を立てないためにも、ローランは結婚すべきでないと思っていた。
「お前が結婚しても、母はお前を恨みはしないよ。あのときは、互いに若く幼かった。だが、年を取るというのはそういうことだ。私も母も、そしてなによりも父がお前の幸せを願っている」
「俺の幸せが、『闇』の女と結婚することか?」
ローランはあえてエミーリアの名を口にしなかった。
「さあな。それは、お前自身がよくわかっているんじゃないのか? 残念なことに、魔力交感の特例報告書は提出されていないからな。それがどういう意味か考えろ」
ルカーシュの言葉に、心の中で盛大な舌打ちをした後、彼はその場をあとにする。
――どういう意味か考えろ。
となれば、向こうが受け取るまで何度も出してやればよい。
自分の執務室に戻ってきたローランは、深くソファに座った。
この時間であれば、まだエミーリアも控えの間にいるだろう。
彼女が『闇』と呼ばれる国王直下の諜報員となれば、今まで同じように茶を淹れてもらえなくなるのだろう。
それを考えると、どこか虚無感が生まれた。
それでも当時、隣国から嫁いできて不安定だった彼女にはそう見えなかったのだろう。息子の存在を揺らがす者が現れたと思ったのかもしれない。
今となっては離宮でそれとなく暮らしている二人の関係に、風波を立てないためにも、ローランは結婚すべきでないと思っていた。
「お前が結婚しても、母はお前を恨みはしないよ。あのときは、互いに若く幼かった。だが、年を取るというのはそういうことだ。私も母も、そしてなによりも父がお前の幸せを願っている」
「俺の幸せが、『闇』の女と結婚することか?」
ローランはあえてエミーリアの名を口にしなかった。
「さあな。それは、お前自身がよくわかっているんじゃないのか? 残念なことに、魔力交感の特例報告書は提出されていないからな。それがどういう意味か考えろ」
ルカーシュの言葉に、心の中で盛大な舌打ちをした後、彼はその場をあとにする。
――どういう意味か考えろ。
となれば、向こうが受け取るまで何度も出してやればよい。
自分の執務室に戻ってきたローランは、深くソファに座った。
この時間であれば、まだエミーリアも控えの間にいるだろう。
彼女が『闇』と呼ばれる国王直下の諜報員となれば、今まで同じように茶を淹れてもらえなくなるのだろう。
それを考えると、どこか虚無感が生まれた。