【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「では、お時間まで下がらせていただきます」
 ローランに頭を下げたエミーリアは、控えの間へと下がった。
 一日の必要な仕事を終えると、時間がくるまでは控えの間――別名、資料室の資料を読み漁る。
 というのも、ローランに頼まれてマヤンについて調べていた頃から、魔獣について気になっていたからだ。
 魔獣はエミーリアが生まれた頃は、数が減り始め、今では魔獣が出現したという話は聞かない。
 では、何と関連しているのか。それがわからなかった。
 魔獣がいなければ、魔獣に襲われる心配もなく、人々は生活を営める。魔獣の存在意義とはなんなのか。
 机の上に肘をつき、頬杖をついた。
 こうやってのんびりと考える時間を取れるのも、ローランの下で仕事をするようになってからだ。他人とは必要最小限しか会わないし、ローランも本当に必要な時にしか呼びつけない。
 エミーリアにとっては、ある種、最高の職場環境である。騎士団の入団試験で不合格の通知を受け取ったときは、どん底に落とされたような気分でもあったが、今となってはそれでよかったのかもしれない。
 家族は相変わらず優しいし、ローランとの関係も悪くはない。最近では、できるだけこの仕事を続けていきたいとさえ思っている。
 トントントンと扉を叩かれ返事をすれば、ローランであった。
「ベルを鳴らしていただければ、私のほうから伺いましたのに」
「俺は、時間がきたら迎えに行くと言った。だから、これが正しい」
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