【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「単刀直入に言おう」
 座った途端、国王は口を開いた。
「エミーリア・グロセ。君にはローランと性交渉をしてもらいたい」
 ガタッとその言葉に反応したのはローランのほうだった。だが国王はローランがいないかのように、真っすぐとエミーリアを見つめている。
「君には、私の直下諜報部の『闇』として動いてもらいたい。だが、そのためには処女を捨ててもらう必要がある」
 エミーリアは表情を変えずに、目をぱちぱちと目をしばたいた。
(性交渉って、あれよね……。男女が一つになる行為。私が? 団長と?)
 国王の話は単刀直入すぎて、よくわからない。いや、何を言っているか、言葉は聞こえている。それを理解することを脳が拒んでいるのだ。
「『闇』というのは、私の権限で自由に動かせる裏の組織だ。情報収集を主としている。その組織に君を勧誘している」
「発言をしても、よろしいでしょうか」
「この場では堅苦しいのは無しだ。聞きたいことがあれば、自由に発言してかまわない」
 エミーリアは、ほっと小さく息を吐く。
「陛下直下の組織となれば、それなりの能力が求められるのでは?」
「そうだ。そして、エミーリア嬢には、それなりの能力があると判断した」
 そう判断されるような心当たりは全くない。
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