【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「私の、この身体がお役に立つのですか?」
「ああ。間違いなく、役に立つ」
 劣等感の塊で合った小柄な身体を役に立つと言われてしまえば、嬉しくないはずはない。
「私が『闇』となれば、家族にはどのように伝わるのでしょうか……」
 エミーリアはそのような組織があることを知らなかった。そもそも国王直下の組織でもあり、『闇』という名がつけられているくらいなのだから、極秘の組織なのだろう。
「ヴィンセントは、仮にも団長だった男だ。彼は知っている。だが、他の者にはけして口外してはならない。君は、表向きは団長補佐事務官のままだ。私の命令によって、『闇』として動く」
 仮の身分を用意してもらえるのならば、それに越したことはない。
「どうだ?」
 間違いなく、これは断れない案件だ。父親であるヴィンセントまで知っているのであれば、なおの事。エミーリアが断れば、騎士団の第一線を退いた父親にまで迷惑がかかる。
「陛下の手足となり、任務を全ういたします」
 エミーリアは深くお辞儀をした。
「その心意気、しかと受け取った。だがな、エミーリア嬢。君は『闇』となるべき条件を備えていない」
 小柄な身体が役に立つと言われたと思えば、条件を備えていないと言われ、エミーリアは少しだけ考え込む。
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