【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「処女では『闇』にはなれない。身体を張ってもらう必要があるからな」
 国王の言葉に、ざわりと総毛立つ。
「だから、ローランと性交渉をしてほしい。それが『闇』になる条件だ」
 エミーリアは視線だけをローランに向けた。彼は先ほどと変わらず、真っすぐに国王を見つめている。
「君は女性だ。情報を引き出すために色仕掛けが必要になる場合もあるだろう。そのときに、君が処女であると相手にわかったならどうなる? いいようにされるだけだ」
 閨事においては、どんな男も油断する。場合によっては、口が軽くなる者もいる。それを狙って情報を引き出せと言いたいのだろう。
 だが、国王が言った通り、エミーリアには性交渉の経験はない。
「性交渉の必要性については理解しました。ですが、その相手がなぜ団長なのでしょう?」
「本来であれば、君の婚約者をそれとなく洗脳して性交渉をしてもらうのだが。君は婚約を解消したと聞いている。となれば、『闇』の存在を知り、私の信用がおける者に頼む必要があるだろう? それに適している人間はローランしかいない」
 婚約を解消したのは事実。むしろ、魔法騎士になれなかったから、解消された。
 足を組んでいたローランは、その足を組み替えるような仕草をする。
「演技ができるようになるまで、女としての悦びをローランにしっかりと教え込んでもらえ」
 エミーリアは、顔を横に向けてローランを見た。
 だが、ローランはけしてエミーリアのほうを見ようとはしない。
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