【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「先ほども陛下から聞いたかと思うが。『闇』とは陛下が独断で動かせる諜報部隊だ。詳しくは俺もわからない。騎士団にとって必要な情報を入手してくるのも彼らだし、俺たちの後始末をするのも彼らだ。ようするに、表に出せないような汚い仕事を一手に引き受けている」
「はい」
「それを、他の者には知られずに行うのだから。騎士団にいる騎士たちよりも、すべての能力において高い者たちが集まっている」
 ちらりと、彼女に視線を向けたが、カップを包み込んだまま動こうとはしない。
「『闇』候補は、まずは俺の下で仕事をする」
「もしかして、マッケンさんも……?」
 ローランには、マッケンという名に心当たりはなかったが、このタイミングで彼女の口から出てきたのであれば、彼女よりも先に送り込まれてきた『闇』候補の名だろう。
「ああ、そうだ。ここで事務官として働きながら、『闇』として相応しいかを、俺が見定めている」
「私が相応しいと、団長が報告されたのですか?」
「いや……」
 報告はしていないが、銀プレートを手渡した。信頼の証のプレートだ。それによって、鋭い者は察したのだろう。
 ローランから信頼を勝ち取ったエミーリアだからこそ『闇』に相応しいと。
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