【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「だが、君はすでに二か月以上も俺の側で仕事を続けているからな。ここまで長く続けられた人物は、他にはいない。前代未聞だな」
 自嘲気味に笑う。
「言っておくが、俺はここにきた事務官たちを苛めてはいないからな? 彼らのほうが、勝手に怯えているんだ」
 その言葉で、なぜか彼女がカップを口元に近づけた。
 こくりと飲む様子から目が離せない。
「美味しいです」
 その言葉を引き出せたことに安堵する。
「陛下はああ言ったが。無理をする必要はない。ゆっくりと考えなさい」
「はい」
 エミーリアは小さく返事をした。
 ローランはそれ以上、何も言わなかった。静かなこの部屋で、二人でお茶を飲む。たったそれだけのことであるのに、ローランにとってはほんのりと心が温まる感じがしていた。
 そんななか、息を吐いて先に立ち上がったのは、エミーリアだった。
「ごちそうさまでした」
 彼女は、先ほどまでの態度が嘘であったかのように、きびきびとした態度で頭を下げた。
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