【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
 その日以降、執務室で寝泊まりをする。
 エミーリアがいつ来るのかはわからない。期間は二週間。その日の間に彼女は来るつもりなのか。どこか期待をしつつも、こなければいいとも思う。
 昼間に顔を合わせても、そのような素振りは一切見せない。感情の乏しさが、余計に彼女の心の内を隠している。
 だが、その期限もあと二日と迫る。
 その日は新月だった。星の瞬きが良く見える夜。
――コツ、コツ、コツ、コツ。
 控えめに扉が叩かれた。ローランの心は跳ねる。
 椅子を軋ませるようにしてゆっくりと立ち上がり、扉の鍵を開けた。
「本当に来たのか?」
「陛下のご命令でしたので」
 そう言いながらも、どこか彼女は震えているように見えた。
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