【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
 決意した気持ちに揺さぶりをかけた、彼への挑戦状のつもりだった。
 すると彼もそれに応えるかのようにして、エミーリアの頬を両手で包み込み、舌を絡ませる。
 執拗に舐られてから、彼はすっと顔を引いた。
「俺を煽った責任をとってもらおうか?」
 バシャッと湯が跳ねるのも気にせずに、ローランによって浴槽より抱き上げられた。ボタボタと身体から水滴がしたたり落ちる。
 浴室から出たローランは、かけてあったバスタオルを手にすると、エミーリアを抱いたまま器用に包み込んだ。
 ドシドシと歩く様子から、彼の心情は穏やかではないようだ。
(怒らせてしまった……)
 そんな思いがエミーリアの中に生まれつつも、それでもやはり初めては彼がいいと思っている。
(団長は本気なのかしら。私と結婚したいって……)
 先ほどの言葉が、胸の奥に火をつける。
 あのようなことを言われて、嬉しくないわけがない。エミーリアは間違いなくローランに好意を寄せている。
 幾度も魔導具の制御がうまくいかなくなったのも、ローランへの想いが原因だ。彼は小柄なエミーリアを認めてくれた。たったそれだけのことかもしれないが、確実にあれがきっかけになった。
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