【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
 一人で悶々と悩んでいるのが悔しくなり、もう一度彼女の頬をむにっとつねってみた。
「むぅ……」
 可愛らしい寝言に、ぷっと噴き出しそうになる。
 できることならば、この腕の中に閉じ込めておきたい。例え、彼女がそれを望まないとしても。
 触れ合う肌から伝わる彼女の体温すら、愛らしいと思う。
「はぁ」
 大きく息を吐いてから、腕の中の彼女を抱き寄せた。
 共に眠りにつく。
 気がつけば、腕の中で何かが動いた。
 はっとして目を開けると、大きな緋色の目と目が合った。
「おはようございます、団長。そろそろ起きたいので、この腕を解いてもらってもいいですか?」
 そう言った彼女の声は、少し掠れていた。
「おはよう。早起きだな。だが、外はまだ薄暗い。もう少し、寝ていたらどうだ?」
「喉が、渇いたので……」
 彼女はケホっと少し咳をする。それには、思い当たる節があるローランは「すまない」と口にした。
「君はまだ寝ていなさい」
< 140 / 246 >

この作品をシェア

pagetop