【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
 寝台から降りたローランが水差しを手にし、そこからグラスへと水を注ぐ。それを手にしたまま寝台へと近づくと、エミーリアがもそっと身体を起こした。彼女は下着しか身に着けていない。それに気づいた彼女は、シーツを身体に巻き付けた。
「ありがとう、ございます」
 シーツで胸元を隠しながらグラスを受け取る仕草から目を離せない。
「身体は、大丈夫か?」
「あ。はい」
 恥じらいながら答えた彼女は、グラスに口をつけた。彼女の上下する喉元を、ローランはゴクリと喉を鳴らして眺めていた。
 よほど喉が渇いていたのだろう。一気に水を飲み干すと、ほっと息を吐く。
「預かる」
 ローランが腕を伸ばすと、彼女は躊躇いながらもグラスを差し出す。
「まだ、休んでいなさい」
「いえ。一度、屋敷に戻ります。昨日、家の者には内緒で出てきてしまったので。いつもの時間にいないと、皆が心配します」
 彼女はそのまま寝台から降りようとしたが、ふらりとバランスを崩した。寸でのところでローランが、彼女の身体を支えた。
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