【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「ほら、よく似合っている」
 バジムの浅葱色の目が柔らかく揺らめいていた。
「アンちゃんは、いつも僕の話を真剣に聞いてくれるからね。それの御礼」
「嬉しいです。ありがとうございます」
 バジムとの出会いがこの場でなければ、彼とはいい友人になれた。だから、今の言葉も偽りではない。友人からの贈り物として、心から嬉しいと感じている。
「魔石はさ。人を魅了すると思わない?」
 お酒を飲んだバジムは饒舌になる。特に魔石について熱く語る傾向がある。
「そういえば、アンちゃん。昔はこの辺にも魔獣が出ていたのを知ってるかい?」
 それはエミーリア自身も気になっていた話題だ。
「そういったお話を聞いたことはありますが。詳しくはわからないです。魔獣と遭遇したこともありませんので」
「そうだよね、アンちゃんは若いからね」
「いつぐらいまで、魔獣はいたんですか?」
「あ、興味ある?」
 頬を上気させたバジムは、嬉々とした笑みを浮かべている。彼はこういった知識をひけらかすような話題が好きだ。エミーリアも彼の話を聞くのは嫌いではない。
「魔獣がいたのは、魔石のとれる採掘場の近くと言われているんだ」
< 211 / 246 >

この作品をシェア

pagetop