【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
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 娼館を占拠した男は、やはりロマシチの者であった。魔石を用いて、人体実験を試みようとした者たちであり、ロマシチの魔導士が中心となっていた集団である。
 彼らは魔石に魅了され、魔石に囚われたのだ。
 魔石によって魔獣が生み出されていたことを知り、それを人間に応用しようと考えた。いわゆる、人間兵器と呼ばれるものを作り上げ、魔石採掘場を所有しているマヤンを占拠しようとしていたらしい。
 祭りの時期を選んだのも、あの娼館を選んだのも、実験体となる人間に適している者が多いと判断したからだ。娼館で身体を売る娼婦、娼婦を求める金持ちや官僚。そのような人間はいなくなってもかまわない。
 マヤン占拠を企んでいたメンバーの中には、あのバジムの姿もあった。娼館を占領した者たちとは別の場所で、人間に与える魔石を研究していた人員もおり、その中の一人がバジムであった。
 彼が娼館を訪れていたのは、実験体となる人を観察するためで、バジムは娼婦たちが対象に値すると蔑んだ瞳で見つめていた。
 だが、そんなバジムにとってアンことエミーリアだけは特別だった。彼女だけはバジムの話を理解し、楽しそうに耳を傾ける。彼女が娼婦らしくもないと感じたバジムは、彼女だけは実験体にするのをためらった。だから彼女を守る意味で魔石を贈ったのである。
 魔力吸引結界で魔力を封じられるのは人の持つ魔力だけであり、魔石の魔力は該当しない。何かしらの形で耳飾りは彼女の助けになるだろうと考えていたし、よく見るとそれには組織の模様が掘られている。彼女に万が一のことが起こったとしても、こちら側の人間であると思わせようとしていたのだ。
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