【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「妹が、ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
「いや……。あの場で彼女の力を利用するという判断をしたのは俺だ。話は聞いていて理解していたつもりだが、こうなるとは思ってもいなかった」
「団長……。妹のことを、よろしく頼みます」
 ローランの気持ちは、確実にアルフォンスにも知られている。もしかしたら、他の騎士たちにも知られているかもしれない。だが、それを恥ずかしいとは思わなかった。むしろ誇らしい。
 どちらにしろ、今は彼女を目覚めさせることが重要なのだ。

 宿に戻ったローランは、必ず最初にエミーリアの顔を確認する。
 部屋に彼女を一人残して外に出ることに躊躇いはあったが、彼女自身に何かあればわかるようにと、あの髪留めに魔法をしかけていった。
「エミーリア……」
 このまま目を覚まさないのではないか。そういった不安がないわけではない。それを払拭するためにも、できるだけ彼女の側にいて体温を感じたい。
 静かに彼女の額に触れると、温かさが伝わってきた。
 初めて彼女と出会った日。小柄な体で『闇』が務まるのかと疑った。彼女と仕事をするにつれ、彼女を他の者に奪われたくないと思い始める。
 そんな気持ちが次第に募り、国王の言葉も利用して彼女と身体を重ねてしまった。だが、そこに募る想いもあったのも事実。
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