【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
 きっかけは王命だったかもしれないが、相手が彼女だから抱いたのだ。誰でもよかったわけではない。
 ローランはエミーリアの頭を優しく撫でた。だが、彼女はぴくりとも動かず、ただ眠っている。
 魔力量に対して身体が追いつかず、今は身体を休ませているだけなのだ。
 となれば、魔力を吸い出してあげれば、身体への負担が減るのではないか。
 やっとローランはその考えにいきついた。
 魔力の受け渡しは粘膜接触や体液交換が一般的である。彼女の魔力をローランが吸い出して受け止めればいい。
 そう、これは一種の治療行為。あのとき、彼女がローランを助けたように、今度は自分が彼女を助ける番だ。
 ローランは眠るエミーリアに、自身の顔を近づけた。
 触れ合った唇から感じる彼女の温もり。潤いを失っている唇を少しだけ食む。
 ひくっと反応が返ってきた。
 閉じている唇を割り、舌を押し込める。彼女の魔力を吸い上げるように、動き、舐り、つつく。
 そのたびに、ひくっひくっと反応が返ってくる。
 生きている。それを実感するたびに、もっと彼女を求めたくなる。
「……んっ……」
 鼻を抜けるような甘い吐息が聞こえた。それでもやめられない。
 エミーリアの魔力は、ローランにとって心地よいのだ。一種の媚薬といえよう。
 ローランが自由に彼女の口腔内を舐め尽くしていたが、それに抵抗する力を感じた。
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