【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
 頬を柔らかな手で包まれ、引き離そうとしているしている。もっと味わっていたいところだが、今は彼女の声を聞きたい。
 くすぶり続ける想いを断ち切って、彼女の唇を解放した。
「……、はぁ……。苦しいです、ローラン様」
 今まで閉じていた緋色の目が、はっきりとローランを見つめていた。
「目が覚めたようだな、眠り姫」
「そういう恥ずかしいことは言わないでください」
 真っ赤に頬を色づかせて唇を尖らせた彼女は、頭の上まで毛布をかぶってしまう。せっかく目覚めた彼女の姿は、隠れてしまった。
 だが、ローランははたと気がついた。
「エミーリア。顔を見せてくれないか? 君は、あの娼館で気を失ってから今まで、ずっと眠り続けていたんだ」
「え? あれからどれくらい経ってるんですか?」
 パサリと勢いよく毛布を跳ねのけた彼女は、驚いた様子でローランに視線を向けた。いつもよりも、表情が豊かに見える。
「あれから丸三日だな」
「そんなに?」
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