【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「座りなさい。今、お茶を淹れる。外は暑くなかったか?」
「お気遣いなく。やることをやって、さっさと終わらせませんか? 団長も災難でしたね。私の教育係に選ばれてしまって」
 彼女は表情を変えずに、じっと目の前の男を鋭い視線で見上げた。
 彼は何か言いたそうに口元をひくりと動かすが、言葉は無い。
 ただ、お互いの腹の底を探り合うような、そんな鋭利な視線が双方から放たれているだけだ。
「やはり、私では勃ちませんか?」
 彼女は緋色の瞳を伏せる。
「いや」
 男は女の右手をとると、そっと自身の股間へと促す。
「ギンギンだ」
 その言葉に彼女はぎょっと目を見開いた。触れた箇所からは彼の熱と鼓動が伝わってきた。
「私が相手でも問題はないのですか?」
「むしろ、誇らしい。君の最初の男になれるわけだ」
 そこで彼は改めて彼女の右手を取り、その甲に口づけを落とした。
「任務を終えたら、俺と結婚してくれ」
「なに、寝ぼけたことをおっしゃっているのですか。これから私は、たくさんの男に抱かれるのです。そのような女が、あなたに相応しいとは思えません」
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