【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「ええ、そうです。学園裏の魔石炉の魔石が魔力干渉を起こして暴走した。すぐさま異常な魔力を検知した魔法騎士が、その場に向かうと一人の幼い生徒が倒れていた。ここまで言っても、まだ思い出しませんか?」
ニコラースは眼鏡の真ん中を右手の中指で押し上げた。一つ一つの仕草が、どことなくわざとらしく感じる。
「あれか」
魔石炉と異常魔力で、ローランの記憶が一致した出来事がある。
「そうです。あの魔石炉暴走事故に巻き込まれたのが、エミーリア・グロセです」
「だが、あの事故は……」
「えぇ、いろいろと表に出せない事故です。ですが、彼女が魔石炉暴走に巻き込まれてしまったのは事実。その結果、他の者よりも何倍も強い魔力を手に入れました」
ローランはびくっと右眉を動かした。
「ですが、それと引き換えに感情を失ったようです。いや、ヴィンセントが言うには、嬉しいや悲しいと感じるようだとは言っていましたね。ただそれが顔に出にくいみたいだと」
だからローランの顔を見ても、怯えた様子を見せなかったのだろう。あの年代の女性であれば、顔を一目みただけで一瞬にして顔色を変えるはず。
「ですから、陛下は彼女を『闇』に欲しがっています。わかっておりますよね」
ニコラースは見下ろしてくる。この男は、ローランが知っている限り、ずっと事務官長という役についている。つまり十年以上も前から、彼は事務官長なのだ。
ニコラースは眼鏡の真ん中を右手の中指で押し上げた。一つ一つの仕草が、どことなくわざとらしく感じる。
「あれか」
魔石炉と異常魔力で、ローランの記憶が一致した出来事がある。
「そうです。あの魔石炉暴走事故に巻き込まれたのが、エミーリア・グロセです」
「だが、あの事故は……」
「えぇ、いろいろと表に出せない事故です。ですが、彼女が魔石炉暴走に巻き込まれてしまったのは事実。その結果、他の者よりも何倍も強い魔力を手に入れました」
ローランはびくっと右眉を動かした。
「ですが、それと引き換えに感情を失ったようです。いや、ヴィンセントが言うには、嬉しいや悲しいと感じるようだとは言っていましたね。ただそれが顔に出にくいみたいだと」
だからローランの顔を見ても、怯えた様子を見せなかったのだろう。あの年代の女性であれば、顔を一目みただけで一瞬にして顔色を変えるはず。
「ですから、陛下は彼女を『闇』に欲しがっています。わかっておりますよね」
ニコラースは見下ろしてくる。この男は、ローランが知っている限り、ずっと事務官長という役についている。つまり十年以上も前から、彼は事務官長なのだ。