【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「おはようございます、エミーリア・グロセです」
「ああ、おはよう。お茶を頼む」
「承知しました」
 お互い事務的な口調で会話を終え、エミーリアはお茶の準備のために隣室へと向かう。
 だが、この空間が今までと異なった空気を孕んでいることに気づく。湿気が多く、少し熱がこもっている空気だ。
(もしかして、昨日はこちらに泊ったのかしら……)
 エミーリアが彼付きの補佐事務官となってから、この部屋を使われた形跡はなかった。昨日は、よっぽど忙しかったのだろうか。
 銀トレイにティーセットをのせ、エミーリアはローランの隣に立ち、彼の前にカップを置いた。相変わらず、薄紅色の可愛らしいカップである。
「お腹は空いておりませんか? 朝食を準備したほうがよろしいでしょうか?」
 ローランのこめかみがひくっと動いた。
「昨日は、あちらの部屋にお泊りだったのでは? シーツも取り換えておきます。そちらも私の仕事で間違いありませんよね?」
「ああ、頼む……」
「承知しました。我々補佐事務官は、主が業務を進めやすいようにサポートするのが仕事ですので、不都合な点がありましたらなんなりとお申し付けください」
「ちょっと待て」
< 44 / 246 >

この作品をシェア

pagetop