【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
(もしかして、量が多くて、食べきれないとか……? 身体が大きいから、たくさん食べると思って、たくさん持ってきちゃったんだけど)
 エミーリアは自分の朝食は準備してある。これをもらってしまったら、エミーリアのほうこそ食べきれない量になってしまう。
「それでは、失礼します」
 今度こそ呼び止められることなく、エミーリアは執務室を後にした。
 彼女が朝食を家から持ってきているのは、嘘ではない。
 毎朝、屋敷の料理人が、エミーリアのためにパンに具材を挟んだものを準備してくれている。
 家族そろって朝食の場につけないことを父親は残念そうにしていたが、エミーリアが団長補佐事務官であるのを考えれば、仕方ないと諦めていた。自身も団長であった彼は、補佐事務官のありがたみをわかっているのだ。
 それだけ仕事を認められている感じがして、いつも父親には励まされている。
「いただきます」
 持ってきた朝食を広げる。ランチョンマットを机の上に広げ、具材がたくさん挟まれたパンを頬張った。今日は、エミーリアが大好きな卵が挟まれていた。
 家族や使用人たちのさりげない心遣いに、胸が痛んだ。

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