【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
第一章
「婚約を解消して欲しい……」
エミーリアは澄んだ湖の底のような青色の瞳に見下ろされていた。
王立ジギルス学園の校舎裏。使用済の魔石を回収するための魔石炉があるため、ここに足を運ぶ人がいるとしたら、その日の日直くらいだ。まして今は昼休み。エミーリアと目の前の男以外、他には誰もいない。
春の訪れを告げるような穏やかな風が頬を撫でつけていくが、エミーリアの内心には少しだけ荒れた風が吹いた。
「理由を聞いても?」
動揺した心を悟られないように、落ち着きを払った声を心掛けたつもりだ。だが、そうやって意識しなくても、彼女の口調はいつも淡々としている。
「もちろんだ。僕にはそれを説明する義務があると思っている。この婚約解消は、双方合意の上で成り立つものであるとも考えている」
一方的に婚約解消を言いつけたら、それは解消ではなく破棄になる。彼は穏便に事をすすめたいのだろう。だから婚約破棄ではなく、婚約解消をしたいのだ。
「エミーリア、君は学園の卒業後は騎士団に入団できないのだろう? それが原因だ」
彼は目の前のエミーリアを冷たく見下ろしている。
(やっぱり、それが理由なのね……)
だからエミーリアも驚きはせずに、ただ緋色の目をそっと伏せた。
エミーリアは澄んだ湖の底のような青色の瞳に見下ろされていた。
王立ジギルス学園の校舎裏。使用済の魔石を回収するための魔石炉があるため、ここに足を運ぶ人がいるとしたら、その日の日直くらいだ。まして今は昼休み。エミーリアと目の前の男以外、他には誰もいない。
春の訪れを告げるような穏やかな風が頬を撫でつけていくが、エミーリアの内心には少しだけ荒れた風が吹いた。
「理由を聞いても?」
動揺した心を悟られないように、落ち着きを払った声を心掛けたつもりだ。だが、そうやって意識しなくても、彼女の口調はいつも淡々としている。
「もちろんだ。僕にはそれを説明する義務があると思っている。この婚約解消は、双方合意の上で成り立つものであるとも考えている」
一方的に婚約解消を言いつけたら、それは解消ではなく破棄になる。彼は穏便に事をすすめたいのだろう。だから婚約破棄ではなく、婚約解消をしたいのだ。
「エミーリア、君は学園の卒業後は騎士団に入団できないのだろう? それが原因だ」
彼は目の前のエミーリアを冷たく見下ろしている。
(やっぱり、それが理由なのね……)
だからエミーリアも驚きはせずに、ただ緋色の目をそっと伏せた。