【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「わかった、案内してもらおう。荷物を置いたら、すぐに現場に向かう」
「休まれないのですか」
「ああ、問題ない」
 転移魔法による魔力消費を知っているトラフィムは何か言いたげに唇をひくつかせたが、黙って部屋へと案内する。
「他に、何かかわったことはないか?」
 歩きながら、ローランは隣のトラフィムへと声をかけた。この男は、こうやって聞き出さないと、大事な内容を心の内側にとどめておく。
「はい。採掘場の崩落以外は特には。街のほうも特に変わった様子はありません。ただ、二か月後には祭りが控えていますからね。それで浮かれいるようなものです」
 魔石採掘場を所有するマヤンでは、年に一度、鉱夫たちを労う感謝祭が行われる。労うというのも口実のようなもので、ようは騒げれば理由はなんでもいいのだ。
「こちらの部屋を用意いたしました」
 トラフィムに案内された先は、ローランがここでいつも使用している部屋だった。さっと荷物を置いただけで、すぐに部屋を出る。
「現場に案内して欲しい」
「はい」
「ところで、アルフォンス・グロセはどこにいる」
「彼は現地で指揮をとっています。鉱夫たちはそのまま魔石を採掘する必要がありますから。いつもより騎士を多く派遣し、危険個所を点検しつつ、現場の調査に入っています」
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